【福岡県】世界に誇る小倉前寿司の神髄
今回で2回目となった九州遠征。九州の玄関口とされる福岡県北九州市には今、国内のみならず世界中で注目されている寿司がある。JR小倉駅から徒歩3分。著者は『鮨 塚本』の門戸を叩いた。
食材の味を活かす小倉前寿司
九州近海の幸を中心に、独自の味付けと華やかな見た目で完成するその寿司は、東京の「江戸前」ならぬ「九州前」・「小倉前」と呼ばれる。『天寿し 京町店』は小倉前寿司を代表する名店。完全予約会員制のうえ、1年は予約が取れないとネットで噂が流れるほどの超人気店だ。そんな中、偶然入ることができた隠れ家的なお店『鮨 塚本』も有名高級寿司店の一つ。以前はミシュランガイドに掲載された実績もあるのだとか。
趣深い暖簾をくぐった先には品のあるカウンター席が6席ほど。奥にはお座敷個室が2室構えている。良質な食材と洗練された職人鮨の本物の味に魅了された。
醤油を使わず、かぼすと塩でいただく
小倉前寿司の特徴は江戸前と違い、醤油を使わない。理由は食材本来の味を活かす為にある。地元で獲れた白身、青物、貝類、イカなどがネタの中心となり、かぼすや塩で味が足される。大将は最初に醤油と岩塩を出したが、「どれも塩が合う」と一言。言われるまでもなく全て塩でいただく。
鮨 塚本 ディナーメニュー(15,000円)
此処ではランチメニュー(10,000円) とディナーメニュー(15,000円 / 18,000円) があり、その日の新鮮な魚を大将が握るおまかせスタイル。初めての小倉前寿司はディナーメニュー(15,000円) でいただいた。
ホタルイカのたたきは焼き昆布と合わせて食べる。お酒の肴としては至極。僕は初めての小倉前寿司の味がわからなくなるのが怖くてこの日お酒は飲まなかった。笑 大将は「お酒を我慢できるなんてすごいねぇ。私は無理です笑」なんて言って場を和ませる、気さくな方。
調理場の頭上には七福神の飾り物がある。「最近まで知らなかったんですけど、日本の神様は恵比寿様だけなんですよね。」と言うと「3柱は中国、3柱はインドの神様で弁財天だけが唯一女性です。」と大将。流石です。。
他にも魚の水揚げ量の有名な場所だったり、静岡県が誇るわさびの話を交わした。
旨味凝縮の職人鮨 小倉前寿司
ここから旨味が熟成された大将の握り寿司が14貫続く。シャリは米酢と橙(だいだい)酢をブレンドしたシャリと、
「どちらが好きですか?」と聞かれしばらく答えられず、「甲乙つけ難いですけど、強いて言うなら北海道産が好みです。」と言ってしまった。笑 すると大将は「実は九州の雲丹の旬はズレてるんですよ。これからの時期が美味しくなっていきます。」とのこと。なるほど、それはまた次の機会に是非味わいたい。
こんなに美味しい寿司を食べたことがなかった。かぼすと塩がこんなにも寿司に合うとは。大将が握った後に出される寿司を眺めていると数秒間かけてシャリとネタが沈んでいく。どんな風に握ったらそうなるのか。笑 こんなところにも職人技を感じた。どれも美味しかったことは言うまでもないが、僕のお勧めはアジ。是非薬味と一緒に味わってほしい。
寿司の他にも塩汁やガリなどの脇役も全く妥協がない。味だけでなく、寿司を握るタイミングや熱いお茶を出すタイミングまでも全て計られているようだ。世界に誇る北九州の寿司は、食材を活かす独自の食べ方と細かい確かな技術、その全てが日本人のおもてなしの心に支えられて成り立っていたのである。それが小倉前寿司の神髄だ。
「ご馳走様でした、人生でいちばん美味しいお寿司でした。次はお酒もいただきます。」
良かったです、と笑顔で玄関まで見送っていただいた大将に一礼し、店を後にした。
旅の本棚
伝統工芸品・博多織
福岡県に来た理由がもう一つあった。日本三大織物に数えられる、伝統工芸品・博多織。流麗な献上柄が映える博多織をグッズとして販売しているブランド「HAKATA JAPAN」へ向かった。
母の日が翌々日に迫っていたことに気づき、写真には映っていないものをそれぞれ購入。実家に即配達。気に入ってくれたようで良かったと思う。
自分用にブックカバーを検討していたが、女性的なデザインのものしか在庫がなく断念。代わりにマスクケースを購入。この時世だからこそ生まれた伝統工芸品の新しい形にも感銘を受けた。
博多明太子
最後に。九州初上陸した2年前。博多といえば明太子、ということでついでに紹介。
これを食べなきゃ博多明太子は語れない!